わけもなくトランペットの曲を聴きたくなることがある。そういう時、たいていは具体的に既知の音楽を頭の中で流している。
このCDにはよく知られた曲にちなんだ「オマージュ(敬意)」が12曲はいっている。しかしもはや原曲を思い出す必要はないほどにこれらは独自の新しい作品に成りきっていて、私の想像していたようなトランペットの響きを追い出してしまう。
鮮明な音色、丁寧で慎重に演奏されるスタイル、時に深いもの哀しさを喚起し、時にピアノとの楽しい掛け合いに聴く者を引き込んで悦ばせてくれるやり口は上質な遊び心だと思う。気分がすっきりする音楽だ。