寒い中で寝ること

寒い中で寝ること

平田晋也

気付けば年末、ガスを解約してからそれなりの期間が経っていました。

幸い給料日が来たので灯油も購入できたので、今は灯油ストーブの上でお湯を沸かしてはシャワーに使うことで投げ込みヒーターの電気代も減らすことが出来ています。


基本的に室内でも台所の窓は余程の強風時以外は空いているし寝室側も窓の上側を開けることが出来るので換気しっぱなし、灯油ストーブの意義はもっぱら給湯と調理、調理中の暖をとる為の道具になっているのが最近です。


こっちはそれなりに楽しいからやっている事ですが、人からは中々わかりにくい考えだとは思います。そこで一つ、今回は氷点下15度以下を想定して野外で寝ようとする際の、平田晋也の思考をちょっと追いかけてみようと思います。つまり、どうやって寝ているかが大体わかるので貴方も今日から外で寝られるかも?なお話です。


まずは、自分自身のコンディションを確認します。後で重要になりますので入念に。今どこか筋肉痛になっていたりしないか、もし去年凍傷になっていたならその部位は再度凍傷になりやすい筈なので就寝の際はケアしたいところ。外傷も体温コントロールに影響しますし、創傷部位の血圧や血流の変化に気付きにくくなる点も注意が必要です。体のブルブルと震える現象は万全な体調でも20分と続かずにエネルギー切れを起こすので先に震えがきていたらその分の疲労を勘定にいれる。最初から疲労困憊していたら後で行うタイムリミットの逆算に支障が出ます。ここまでクリアしましたか?


次に、そのコンディションを踏まえた上で寝る場所と寝方を思案します。周囲を観察して、なんとなく生きて朝日を拝めるイメージのできる場所を探して、地面の状態を確認。実は別に平担じゃなくてもいい。厳冬期は下に敷くマットをよっぽど分厚くしない限りは地面からの冷えは避けられない。だから寝る姿勢は地面との接地面を削り側臥位で、腕のコンディションが問題なければ片腕を犠牲にして冷えから身体を守る。1~2時間おきにどの道起きる前提なので腕が多少痺れても起きたタイミングで反対を向いて逆の腕を犠牲にすれば問題ない。むしろ腕の内部の冷えた血液を体幹に送るのをできるだけ遅くしたいので、実際には腕が痺れて血の巡りが痛い方が好都合な訳ですね。地面が平坦でなく窪んだり出っ張りがあれば、むしろ側臥位で身体を支える為に利用します。

続いて寝る際に使う道具の確認。大体忘れ物ばっかりだから有るもので寝るのです。銀シートの貼られたオレンジ色のエスケイプビビィに薄い一枚布のインナーシーツを入れて、その隙間には(脱がない場合が多いけど脱ぐなら)靴を。麻袋や薄い布袋があれば足を突っ込んで、結露と霜の発生を内部からビビィと麻袋の隙間に誘導する。知らない人には意味がわからない行動で笑うけどこっちは生きる為に必要と考えるからやるだけ。頭は冷やしたくないから帽子はかぶって手袋も。とにかく着るものはある程度着て寝るので、就寝前に着干しで乾かせるものは乾かす。汗は避ける。

FBで見かけたレッドブルの記事には500mlのペットボトルを湯たんぽに…とか書いてますがそんな量のお湯は-15℃くらいの場所ではタオルに包んでも即冷めるので絶対にやらない、むしろ凍る。就寝中包みが取れて皮膚に触れたら凍傷のもと。短時間で急激な温度変化が起きて、汗と合わさりかえって結露と霜が増える。どうしてもやるならせめて1ℓ、できれば1,5ℓは欲しいところ。そして汗をかかない様に意図的に体からは遠ざけて、温まった空気が少し流れていく場所をつくる。

なんとなーく就寝のイメージが固まったらそこに至るまでの下準備を始めます。


とりあえず食う。肝臓に満タンで蓄えておける、すぐ取り出すエネルギーのタイムリミットは成人が通常環境で精々8時間。実際に限界環境下だと僕個人の体感で6時間あるかないか。つまりこのエネルギーでできるだけ発熱させて朝まで持たせるのが平田晋也の考えている、別に寒いところで寝てもとりあえず大体何とかなる!を支えている柱です。

夜の間に不足したらその都度食べますが、食ってから考える。普段何を食っているかすぐ忘れますが、こういう日は常に多めに食うように体が勝手に動いてくれます。また、よく腹八分目と申しますが、就寝時の事を考えると9分目をお勧めします。沢山食べた物が体内で多少の保温材になってくれるという少しの期待と、大きな目的は就寝時にできるだけ唾液の分泌を抑えて口腔からの不感蒸泄量を減らして体温を保持しつつ、周囲の結露を減らす事が本命です。満腹感が強い状態からなら、口腔をある程度乾燥させた状態で就寝に移れます。野外道具のレビューで霜が、結露が何だという前に人間ができる事をやっちゃいましょう。どうしてもお酒が飲みたい方は吞んで完全に酔いがさめるまで寝ない事で解決できます。血管の収縮が正常になった辺りで判断しています。

食べたなら、時計を見て時間を逆算します。明日の日の出は6時54分。仮に22時に寝始めたら日の出まで約9時間か。実際は日の出前に起きるので実質8時間。後で少し触れますが恐らく2度目に目を覚ます午前2時あたりに一度飲み食いをして朝まで十分かな。冷え込みが緩いなら1回後でもいい。

この辺りで必ず朝まで過ごせると確信を持てます。


確信が持てたなら、横になる前に体の準備をします。別に大した準備という訳ではなく、横になってから汗をかいたり、不要な放熱をしないように体を落ち着けるだけです。体の表面がキュッとしまって、体内の流れがとても緩やかになる感じです。


これでお楽しみの就寝タイムに入ります!

とりあえず先にイメージしたセッティングで大体の態勢をつくったら、そこからはパズルゲームをゆっくりとするように、呼気と空気と熱と冷気の流れを組み立てていきます。思ったよりも首が冷えているな、ここでインナーシーツを折り返しておこう。呼気が斜めに動くから、ビビィが湿らないように斜めに道を作って後は閉じよう。

っていう具合にゆっくり、ゆっくりと微睡ながら眠ります。

元々は冬山山岳で身についた習慣ですが約2時間で目が覚めます。状況を確認する為ですね。大体ここで左右に寝返りをして、下になっていた腕をケアします。熱の産生が遅くなったら枕元に置いておいた食糧を食べて暖かいものを飲んでまたゆっくりと寒さと遊びながら寝ます。


心配になるかもしれませんが、一度この態勢を作ってしまえばあなたの元に寒さはゆっくりとしかやってきません。その間にまた何とかして、次にやってきた寒さをまた…というのを夜明け前まで繰り返すだけで朝日がやってきます。

身体にブルブル震えがきた際は必ず止めます。そのままではすぐにエネルギー切れになってしまうので対応を。(今は訓練で体全体の震えを止めて、脚、腹部、頭と腕などに分けて震えさせています。極北地域の民族の様に完全に震えを消すのは中々難しいと感じています。どちらにせよ体温を上げる対応はしますが)


大地に横になったあなたは、ほぼ同じ歩調で寒さと一緒に明日の朝日に向かってゆっくりと歩いているんです、近づき過ぎず、離れ過ぎずに。


やがて日の出の前に起きて、なんとなーくその場の気分で焚火したりして湯をわかしたりしながら朝日を迎えて終了になります。最後はゆっくりと動くようにしてください。急に末端の冷えた血液が循環して心臓が痛くなったりします。それか死にます。昇った太陽の有難さがすごく身に染みて体験できる時間です。ありがとう!!


・・・という感じに過ごせば、誰だって高い道具も揃えずに楽しんで適当に冬でも眠ることができます。過信でもなく自分の生きる力強さを感じることができます。

別に僕は耐寒訓練をしているつもりはありません。というか訓練しても人間の耐寒性は変わりません。変えられるのは対応の仕方、向き合い方だけです。加藤文太郎氏あたりが好例で、別に寒冷環境に身を置いても寒さに強くなったわけではなく、寒さへの向き合い方を学んだ事が結果として強くなったと他人からは認識された訳です。


多分こういう事を通じて、一人でいる事と孤独でいる事の差を体験できるんじゃないかなーと僕は考えています。おススメですよー!



って完全に忘れてました!今年の目標は小屋を建てるでしたが、とりあえず物置小屋をお借りできましたので中身を片付けて準備中です。何とか年内に取り掛かることが出来ました。JDJN(住宅の断熱なんぞ頼ってないで自分で何とかしろよ)方式の小屋を目指しています。もちろん来年の目標は山と結婚することです。来年もよろしくお願いします!!

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